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歯周病と喫煙に関して

   きちんとケアしていても、タバコを吸っていると歯周病の進行が止まらないケースは珍しくありません。
歯を毎日きちんと磨き、歯医者にも定期的に通っているのに、歯周病の進行が止まらない……。こうしたケースは珍しくなく、特にタバコを吸っている人にありがちです。なぜタバコを吸っている人は歯周病になりやすいのでしょうか。そのほかにも歯周病になりやすい要因はあるのでしょうか?

歯周病の一番の原因は歯周病菌。でも、これだけではありません。なりやすさ、悪化のしやすさには患者さんの免疫力(歯周病菌を抑えるからだの力)、生活環境などが影響しています。例えば、心理的ストレスや睡眠不足でからだが疲れ、免疫力が低下すると、歯周病が急速に悪化することがあります。中年女性の患者さんでは、親の介護などが始まって、ストレスが続くと歯周病が悪くなる人が多いいらっしゃいます。

喫煙者の歯周病悪化リスクは5~8倍高い

こうしたなか、今回、詳しく取り上げるタバコは生活習慣に関連する代表的な歯周病の悪化要因です。

喫煙者には歯周病が多いといわれますが、実際、日々の臨床からその通りだと感じています。歯周病が悪くなるリスクはそうでない人の5~8倍高いこともわかっています。

ではなぜタバコを吸っていると歯周病になりやすいのでしょうか。

そのキーワードは「歯ぐき」にあります。タバコを吸っている人の歯ぐきは黒ずんでおり、硬く、水分不足で乾いた状態になっています。これはタバコの主成分の一つであるニコチンの強力な血管収縮作用によるもの。歯ぐきに血液や栄養がいきわたらないため、このようになってしまうのです。

さらにヘビースモーカーの人では口の中が常にタバコの煙でいぶされているような状態です。これはいわば歯ぐきを燻製(スモーク)にしているようなもので、木のチップでいぶすのと違い、多くの有害物質が含まれるタバコの煙でいぶされることが問題です。

実際、喫煙者の歯ぐきは防御反応が働きにくいことが知られています。例えば歯周病の比較的初期からあらわれる歯ぐきの腫れは歯周病菌を取り除こうとするからだの防御反応。からだが病原菌を殺す白血球を患部に運ぶために血流を増やし、血管を広げているので、赤く腫れるのです。

しかし、タバコを吸っている患者さんは血流が悪いために、白血球をスムーズに運ぶことができません。このため、歯ぐきの腫れはほとんど起こりません。気づかないまま歯周ポケットがどんどん深くなり、その奥で歯周病が進むことが多いのです。

ここで最近流行っている加熱式タバコでも同じ現象が起こるかどうかは、はっきりしません。加熱式タバコの多くは有害物質のタールが少ない、あるいは発生しないといわれています。この点が健康にいいといわれていますね。しかし、ニコチンなどほかの有毒物質は従来どおり、含まれています。

加熱式タバコの普及により、歯周病の症状を訴える患者が増えた様にも感じます。タールは有害物質である半面、抗炎症作用があるため、通常のタバコを吸っているときはこの抗炎症作用が働き、歯周病による歯ぐきの痛みなどが抑えられていた可能性が高いです。

詳細については今後の研究を待つ必要がありますが、タバコはからだに確実に悪いものですし、寿命も短くしますから、できるだけ本数を減らすか、やめるべきでしょう。