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日本は『歯周病大国』!!

  働き盛りの各年代において、歯周病や虫歯に悩まれている方が非常に多く見受けられます。統計的に見てもここ十数年で、10代から40代の歯周病が増えているのは事実です。それにともない、働き盛りの世代に関していうと、口臭の悩みを相談される方も多くいます。

『自覚しにくい自分の口臭』

――職場での口臭は多くの人が気になっていると思います。でも気づいていないのは本人だけで、かといって周りも指摘しづらいですよね。

口臭はご自身の自覚は乏しく、ご家族から指摘されて相談しに来られる方のほうが多いんです。口臭には生理的口臭と病的口臭の2種類があり、夜間に唾液が少なくなると口の中が乾燥し、朝方はやや口臭が強くなる――これは生理的な現象ですから、さほど気にする必要はありません。朝起きて歯磨きをして、口の中の湿潤状態が上がれば自然と匂いも和らぎます。唾液には口の中を綺麗に洗ってくれる自浄作用もありますから。寝る前に舌のブラッシングをすると、翌朝の口臭軽減に大きな効果があります。

ところが病的口臭、歯周病によるものに関しては歯科医による適切な治療が必要です。歯周病とは、プラーク(歯垢)に潜む歯周病菌によって、歯ぐきに炎症が起き骨が溶かされる病気です。歯垢1mgの中には1億から10億もの細菌が存在すると言われていますが、そんな細菌が繁殖した集合体プラークがぬめり(バイオフィルム)のように歯に付着し、匂いの原因となるのです。歯周病が進行すると、膿んだ歯ぐきから、それこそ生ゴミのような匂いがしてきます。

すぐに痛みが出る虫歯と違って、歯周病は本人が気づきにくい「サイレント・ディジーズ」です。歯がポロッと抜け落ちてはじめて、さすがにおかしいと思って受診しにきた、という患者さんもいらっしゃいます。個人差はありますが、それほどまでに自覚症状に乏しい病気です。「目覚めたとき、口の中がネバネバする」「ブラッシングすると出血する」「歯ぐきに違和感がある」といったチェック項目をよく確認して、早めに発見して治療を開始する必要があります。

   欧米では『口腔内の健康』に関して非常に関心が高く、仕事の会議よりも歯医者の予約が優先されるのは当たり前となっています。日本に比べると歯周病の患者数は圧倒的に少ないです。なぜ日本人は医療先進国にいながら国民の8割が歯周病に罹患しているかというと、保険制度そのものに問題、欠陥があるのは否めません。

 ただ保険制度の問題だけではないと私は考えます。確かに「予防」に保険点数がつかない保険制度の問題が大きいのですが、それ以上に、日本では「歯周病は治らない」「加齢とともに進行するからうまく付き合っていくしかない」と思っている歯科医師がいまだ多いことに大きな問題があると思います。これだけ医療の進んだ先進国で、たとえば歯周病のセミナーや講習会のような場で、ドクターから「歯周病って治せるのでしょうか?」という質問が出たりするわけです。エビデンスに基づいた治療をすれば歯周病は必ず治せる病気だということが何十年も前にもう証明されているのに、これが日本の歯科医療界の現実です。

  世界のスタンダードは「感染の制御」にシフトしています。

  ルートプレーニングで歯垢を全部とらないと治らないという考え方は1世代前の考え方。今はインフェクション・コントロール(感染の制御)という考え方にシフトしてきていて、これは患者さん個々の免疫で抑えられるところまで感染源を少なくするという考え方です。免疫の強さは人それぞれで違います。風邪を引きやすい人、引きにくい人、歯周病になりやすい人、なりにくい人、さまざまです。その人の免疫で抑えられるところまで感染物質の総量を減らすというアプローチであれば、知覚過敏の発現率も明確に下がって、メリットが大きいと思います。しかしながらもちろん従来どおりの歯石除去(歯石を取り除き根面を滑沢にする)が必要な患者さんもいらっしゃいますので、どの治療法が一番というのはないと思ってください。重要なのは過去の既成概念にとらわれず数ある治療法の中から患者さんそれぞれにあわせたレシピを作成すること、これにつきますね。

もう少し丁寧に説明すると、インフェクション・コントロールは患者さんが行うものと、医療従事者が行うものとがあります。患者さん自身で行うものが、日々の歯垢の除去、つまりブラッシングです。歯を5つの面で立体的にとらえると良いかと思います。デンタルフロス、もしくは歯間ブラシを使ってはじめてすべての面でのブラッシングが完結します。これは非常に重要です。歯ブラシだけでは綺麗磨くことは物理的に不可能ということです。磨き残しが少なくとも30%以下、重症歯周病患者さんなら20%以下になるようにしてもらいます   。専門的歯周病治療にはいる前に正しいブラッシングをマスターしていただく必要があります。患者さん自身でインフェクション・コントロールをできるようになれば、その後の治療がスムーズになり短期間での治療完了も可能となります。逆にいいますと、患者さん自身による良好な口腔内清掃がなければ歯周病治療は成立しません。『なんで毎回歯医者にいくとブラッシングの注意をされるんだろう』と疑問をお持ち方も多いかと思いますが、上記の理由により毎回しつこいくらいに言わせていただいているということをご理解ください。

患者さんの手が行き届かない20から30%部分の磨き残しを、われわれ医療従事者のインフェクション・コントロールで定期的にフォローします。その両輪の態勢をとることで治療期間を短くできますし、その後も継続的によい口腔状態を保つことができます。

歯周病は細菌による感染症ですから、ストレスが過度にかかる状態が継続すると白血球の機能不全を起こすリスクが高まり、口腔内の状態が悪化します。なので、日頃からできるだけストレスをうまく解消して、バランスのよい食事をとることが大切です。口の中は末梢組織ですから、末梢の血液循環をよくするビタミンEや、抗菌力が強いビタミンC、DHAやEPAの含まれた食べ物は、歯ぐきにとって特によいものです。よく噛んで食べることが、栄養になるのはもちろん、脳を活性化し、人の顔を美しくします。

ストレスを抱えていると、どうしてもブラッシングが甘くなりがちですが、健康の要は歯にあります。キチンとした口腔内管理は口腔内フローラを良好に保ち、究極のアンチエイジング法でもあります。すべての方に、ご家庭でできる、ご自身の歯と健康を守るための第一歩を踏み出してほしいと心から願っています。